作詞作曲グラフィティ<9thメロディーのけだるさ・切なさ>

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こんにちは、はじめまして。
アート倶楽部「よしの部」を主宰する、作曲家の野口義修(のぐちよしのぶ)です。
これから、作詞作曲グラフィティと題して、作詞や作曲のヒント、アイデア、悩み相談、ヒットの分析、懐かしトーク......なんかを、グラフィティ(落書き)感覚で話していきます。
時には、仲間の作家さんやアーティストさんの力も借りて、楽しく続けていきたいと思います。
作詞・作曲・シンガーソング・ライター、弾き語り、バンド、カラオケ、ビートルズなんかに興味がある方にお送りします。ぜひ、応援して下さい。
よろしくお願いいたします。

なお、この記事は、2010年7月発売の月刊サウンドデザイナー誌の野口連載コーナーとリンクしています。併せてお読みくださいね。


今回は、作曲/メロディー関係のカテゴリー【作曲の散歩道】から
テーマ<9thメロディーのけだるさ・切なさ>と題してお送りします。


さて、最初に初心者の皆さんのために、9thとは? というお話です。
Xth というのは、X番目という意味です。9thなら九番目です。
では、何から九番目なのか?
ここでは、あるコードの根音(ルート音)から数えて、九番目という意味です。
コードネームの左端、大文字の部分が 根音=ルート音を示します。

C7(ドミソシb)なら、C(ド)音から数えて、♪ドレミファソラシドレ......で九番目は、レ音ですね。
Dm7(レファラド)なら、D(レ)音から数えて、♪レミファソラシドレミ......で九番目は、ミ音です。

......で、<9thの心地良い響き>についてですが、
この音(9th)をメロディーのポイント部分やコードの構成音などで上手く使うと、実に心地良いサウンドがするのです。
その心地よさは、都会的・おしゃれ・けだるさ・知的・アンニュイ(ものうい けだるさ = フランス語)・切なさ......などという言葉で表現できそうです。

ボサノバの代表曲、アントニオ・カルロス・ジョビン作曲の「イパネマの娘」
イントロやAメロディーなど、Cメジャー(ハ長調)のキーで言えば ♪シラシラというメロディーが聞えます。
この ♪レこそ、9thですね。
アストラッド・ジルベルトとスタン・ゲッツの貴重な映像で、9thのけだるさ感を楽しんでください。
YouTube環境OKの方は ぜひ お聴きください。

 


ちなみに このテイクでは、キーがDb(9thは、ミb)になっています。

ビートルズの「イエスタデイ」のモチーフ(最初の小節)部分のメロディーも Fコードで ♪ソファファと唄っています。 この♪ソも9thですね。

また、イントロで ♪レレドド レレドドと 切ない系の9thサウンドが印象的なのが、ニルソンやマライア・キャリーで 世界的なヒットとなった、「ウィズアウト・ユー(
ウィザウト・ユー)」です。

ニルソンのテイクでは、キーがEメジャー(ホ長調)で、♪ ファ#ファ#ミミ ♪ファ#ファ#ミミ(ファ#が9th)
と、ピアノの9thフレーズが、(涙)を誘います。

ニルソンの音源
を下に紹介いたします。




This is バラード! ポップス史に残る
世界の名曲ですね。 9thの都会的な切なさの感覚、お分かり頂けましたか?
ちなみに この1曲でバラードの王道のノウハウはほとんど学ぶことが出来ますよ。 

しかし、この切なさの 原点はどこにあるのでしょうか?

実は、ニルソンの歌で大ヒットしたこの曲のオリジナル版は、イギリスのロック・バンド「バッドフィンガー」のもので、
バッドフィンガー・メンバーのピート・ハムとトム・エヴァンスが詞曲を担当しています。



第2のビートルズと謳われ、ポール・マッカートニーのプロデュースで 幸先良くデビューした彼らですが、 その後、契約問題でこじれにこじれ、幾多のヒットを生みだしたにも関わらず、いい加減な契約やマネジメント会社の対応の悪さなどいろいろあったのでしょう、
彼らの元に 一切の印税は入らず......結果、ピートもトムも 傷心の果てに 自殺してしまうのです。
ロック界の悲劇の一つです。
彼らは あの世に旅立ちましたが、この歌を残しました。
ニルソンのリメイク・カバーと比べると、コードの動きやサビメロディーの解釈などかなり違っていますね。
もちろん、バッドフィンガーがオリジナルですが、バラードという意味では、ニルソンのカバーのアレンジも素晴らしいです。

9thサウンドの切なさだけでなく、そのバックにあった悲しいストーリーが、 この曲を悲しく切なく、美しく響かせるのかもしれません。
9thのお話は、我が著書の作曲本にも詳しく解説してあります。

最後に、 「イパネマの娘~ベスト・オブ・アストラッド・ジルベルト 」 「バッドフィンガーNo Dice 」 「ベスト・オブ・ニルソン 」を紹介して、初回のコラム「作詞作曲グラフィティ・作曲の散歩道編」を 御開にしたいと思います。

ご静聴ありがとうございました!  ご質問や感想など、遠慮なく コメントや ツイッターでお寄せください。
これからも よろしくお願いいたします。



コメント(4)

「Yesterday」についての隠された真意は野口氏が作曲本で記述されていましたが、「Without You」にまつわる悲劇は初めて知りました。
また、「イパネマの娘」は洗練された音使いで、まさにリオの優美な海岸風景を描いておきながら、実はその裏側にある孤独や哀愁を歌っていて、これぞ真のスタンダードと言うに値するものですね。
60's後半以降の優れた作曲家は、ビートルズ+ボサノバをベースにした音楽性を持っている人が多いですね。

Jiroさん、ようこそ、「よしの部」へ!
バッドフィンガーは、ギター・ポップ/パワー・ポップといったサウンドの原点とも言うべきバンドです。
シングルの
1970年* Come And Get It * No Matter What
1971年* Day After Day など
ポップとはこれといった名曲ばかり! ぜひ チェックを!
また、* Come And Get It は ポール・マッカートニーが彼らにプレゼントした曲で、YouTubeでは ポール一人の多重録音デモテープも聴けますよ。
これも ポップとはこうやって作るのだ! というサウンドです。

60年代後半は ビートルズ+ボサノバをベースにした音楽性! そうですね、賛成です。

ニルソンの「Without you」素敵な曲ですよね。
というよりも、ほんとは先に私はHEARTのアン・ウィルソンがうたう(というか叫ぶ?)Without youにノックアウトされたのですが(#-.-#)
この切ないのは9thのせいやったんですね〜〜。

これからも素敵なコラムをお願いします^^

おお、
Myニャオーミ! コメントをありがとうございます。

■マライアキャリー
http://www.youtube.com/watch?v=dcmy6CLEmUo
歌姫!
メロディーを細かくR&B的にフェイクしていますね。
でも 基本のアレンジは ニルソンのものですね。

■Heart
http://www.youtube.com/watch?v=GrI1dZuimfo&feature
(頭2分 メンバー紹介)
ニャォ??ミさんの 知っているバージョンですね。

■Badfinger(オリジナル)
http://www.youtube.com/watch?v=PyBS_1vGwpU
唄っているのが
作曲のピートハム=悲劇の人。
コード進行が微妙に違うし サビのメロディー、
伸していない! スタッカートで唄っている。
おっと、こちらが本物でした。
しかし、
世の中的には カバーしたニルソンのテイクが
広まっていますね。
しかし、こちらも 味があります。


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